革靴好きの方なら「オークバーク(Oak bark)」という名前を一度は耳にしたことがあるかもしれません。
最高級の革底材として知られるオークバークですが、実際のところ一般的な革底と何が違うのでしょう?
Gennojiです。
今回は革底に使われる「オークバーク」とは何か?お話しします。
オークバークとは革の鞣し方のひとつで、Oak bark(樫の樹皮)から抽出されるタンニンで鞣された革のことを指します。
その工程は古典的で非常に長い時間と手間がかかるため、ヨーロッパ圏でも限られたタンナーでしか作られません。
オークバークはどのようにして作られるのか?
オークバークはどのようにして作られるのか。
私が以前見学させていただいたオークバークタンナーの製革工程です。
こちらが原皮。まだ毛の付いている牛皮で腐敗を防ぐため塩漬け処理がされています。
この原皮を石灰水溶液に漬けるなどして汚れや毛、脂分を取り除きます。
下処理の終わった生皮は、ピットと呼ばれるオークバークタンニンの水溶液で満たされたプールに漬けられます。
横に並ぶピットはそれぞれタンニン濃度が異なります。
最初は濃度の低いピットから始まり徐々に濃度の高いピットに移し替えます。これをなんと9〜13回と繰り返します。
(最初からタンニン濃度の高いピットに入れてしまうと、表面付近で先にタンニンが結合してしまい、タンニンが奥まで浸透するのを阻害してしまいます。)
このピットでの鞣し作業だけで80日間を要するとのこと。
しかし、オークバークはまだまだここからが長い。
屋外にあるこちらの穴にピットで鞣された革とオークチップを交互に重ねていきます。
この状態で寝かせることなんと8ヶ月!
ピット鞣しが発明される以前からこのようにチップに埋める鞣し方はあったそうで、本当に古典的な方法を続けているのだとわかります。
(オークバークタンナーによっては、ピット鞣しで完結するところもあるので、このあたりはタンナーによってやり方が違うようです。)
8ヶ月寝かされた革は掘り起こされ綺麗に洗います。この状態の革は靴底に使うのには柔軟性が足りないため、ドラムで回されながら革に油分が加えられます。
そして最終仕上げ。油分が入り柔軟になった革をこちらの機械で最後に叩き締めます。
叩かれる毎に光沢が増していくオークバーク。
オークバークの繊維が詰まっているのは長い時間をかけて鞣されることもありますが、この一手間にも重要な役割があると思います。
一年以上の時間をかけようやく完成。
樹木のような美しい色合いがオークバークの特徴です。
その後、元々のキズなど避けながら丁寧に切り出され、革靴の中底や本底、ヒールなどに使用されるのです。
オークバークは実際何が良いのか?
高級靴に使用されることが多いオークバーク。
修理屋でオールソール修理をする場合でも、一般的な革底とオークバーク革底では5,000円くらい価格差があると思います。
そんな高級素材オークバークですが、実際何が良いのでしょうか?
・耐久性が高い
オークバークはとにかく繊維が詰まっているので耐久性が高いです。一般的なベジタブルタンニングのレザーソールと比べ摩耗に強いことは靴底材として大きなメリットです。
・ソールの返りが良い
オークバークは硬いイメージがあるかもしれません。
たしかに履き始めこそ硬いですが、履き込むと次第に柔らかくなり、オークバーク特有のなめらかな屈曲をするソールになります。
・ひび割れにくい
革底や革中底にひび割れが起こる要因の一つとして、タンニン鞣しの革は水分(雨や汗)を含むことで水溶性のタンニンが一部流動し革の耐久性が低下してしまうことが考えられます。
オークバークは長時間かけて鞣されることでタンニンの結合が強く、水分を含んでも変質しにくいので、ひび割れにくいと言えます。
最後に
今回は革底に使われる「オークバーク」とは何か?についてまとめてみました。
価格が高いものにはそれなりの理由があります。
しかし、単に価格が高いからといって、すべての人にとって良いものとは限りません。
何で高いのか?何が良いのか?を理解していれば、靴を選ぶ際の参考になると思い取り上げてみました。
レザーソールを履きたいけど摩耗が気になってしまうという方は、一度オークバークを試してみてはいかがでしょうか。