「あのお客さんの靴、かなり笑ってたね。」
靴屋で働いていると、時々こんな会話が出てきます。
これ、何のことか分かりますか?
Gennojiです。
今回は“靴が笑う”についてお話します。
人が笑顔になることは良いことですが、靴が笑うのはあまり良いことではありません。
わかる人にはわかる憎き靴の笑い。
その原因と対策にも触れていきたいと思います。
靴が笑うとは?
上の写真を見てください。
履き口の内側がくの字に開いているのが分かると思います。
これが業界用語で言うところの“靴の履き口が笑っている”状態です。
一度こうなると、歩くたびにパカパカと口が開き、まるで靴が笑っているみたいに見えるのです。
なぜ、このようになってしまうのか?
履き口が笑う原因
履き口が笑いを起こす原因はいくつかあります。
・靴の設計に問題がある
新品の時点で、すでに履き口が広がっている靴や、誰が履いても履き口が笑ってしまう靴の場合。
これはパターン(型紙)が悪かったり、ローファーなど履き口が広いデザインにも関わらずアーチを持ち上げ過ぎているなど、設計上の問題が考えられます。
・サイズが合っていない
靴のサイズは大き過ぎても小さ過ぎても、履き口が笑う原因になりえます。
大き過ぎる靴を履くことで余った空間が外に広がることもありますし、ふまず付近の肉付きのよい人がウエストの細い靴を履いたら、やはり履き口は広がります。
また、足と靴のアーチのサイズ(長さと高さ)が合っていないことも考えられます。
・アーチ(つちふまず)が落ちている
どんな靴を履いても履き口が笑ってしまう人は、足のアーチが落ちていることが原因かもしれません。
アーチが低下すると、体重を支えられなくなり甲が内側に倒れ込むので、履き口が笑ってしまうのです。
この場合、履き口の笑いは足の状態を知るサインになります。
履き口の笑いの対処方法
すでに笑いが起きている靴の対処はなかなか難しいもの。
しかし、原因を理解してアプローチすることで改善したり、靴選びから気を配ることで対策することが出来ます。
・タンパッドを取り付ける
タンパッドとは甲用のインソールです。タンパッドを靴のベロ裏につけることで甲周りの隙間がなくなり履き口の広がりを抑えられる場合があります。
とくに甲の薄い人は試す価値あり。
・インソールを入れる
アーチが落ちている人の場合、アーチサポートの付いたインソールを使うのもひとつです。
(ただし体重を支える剛性があり、内側に倒れた足を正してくれるインソールでないとあまり意味はありません。)
インソールは入れる靴や足と相性の良いものを使わないと効果がないので、実際に試着して選ぶようにしましょう。
・靴選びから気をつける
履き口の笑いを防ぐには、靴のサイズ選びが大切です。
とくに靴の後方部分が足の形状に合致していることが重要になります。
足を上から見たときに、かかと、親指の付け根、小指の付け根、この3点を結んだ三角形が合致する靴を選ぶと良いでしょう。
デザインで言えば、ローファーなど履き口の広いデザインは履き口の笑いが顕著に現れます。
履き口が笑いやすい人は、ヒモやベルトで着脱するような甲の深いデザインを選ぶと良いでしょう。
最後に
今回は靴の”笑い”についてまとめてみました。
近年、ローアーチで甲が薄い足の人が増えているので、靴の笑いに悩んでいる人も少なくないと思います。
メーカー側も、靴のウエストを絞ることばかりに気を取られず、多角的に足を支える設計をしないと上手くいかないでしょう。何事もバランスが大事。
参考になることがありましたら幸いです。