「靴が馴染むまでは修行期間だから、きつくても我慢!」
タイトフィッティングという言葉が一人歩きして、革靴はとにかくきつく合わせないといけないと思っている人も少なくないようです。
革靴のサイズ選びについて、ネットの偏った情報を鵜呑みにするのは要注意ですよ。
Gennojiです。
今回は、誤解しやすい革靴のタイトフィッティングついてお話しします。
時々お客さんから「痛くて履けない靴があるんだけど、なんとかならない?」と相談を受けることがあります。
「痛くて履けない」の要因は様々ですが、中には足の実寸に対してかなりサイズを落として履いており、指先が圧迫されて曲がり赤く腫れ上がっているような人もいます。
聞くと、最近革靴に凝り出してタイトフィッティングを実践しているとのこと。
好みとはいえ、足の健康を害するほどタイトなサイズ選びはおすすめ出来ません。
そもそもタイトフィッティングとは何か?
これは、グッドイヤーウェルテッド製法の靴のサイズ選びについて生まれた言葉だと思います。
グッドイヤーウェルテッド製法は、履き込むと中底が沈み、ゆとりが出やすいという特徴があります。
また表革やソールも硬い素材を使っている場合が多いので、馴染むまではキツく感じやすいという面もあります。
そのことからグッドイヤーウェルテッドの靴は馴染んだ時に快適に履けるよう、新品時は少しタイトなサイズ感で選びましょうという考えが生まれるわけです。
これが、俗に言う「タイトフィッティング」です。
誤解を生みやすいタイトフィッティング
革靴のサイズ選びについてネット上で個人が発信している情報は、なにかと誤解を生じやすいもの。
なぜなら、足の形は千差万別、足の状態も人それぞれ違うにもかかわらず、靴選びの成功体験をアドバイスとして語られていたりするからです。漠然とした情報も多いでしょう。
「最初は痛くてとても歩けなかったが、馴染んだらウソのように最適になった」
などと書かれていると、痛くて歩けない程にタイトなサイズを選んだ方が良いのかと誤解する人もいます。
足の感覚というのは人それぞれ違いますから、フィッティングの際は自分の足に向き合い、相性を判断する具体的なポイントを掴んだ方が良いと思います。
まずサイズ選びの基本を心得る
革靴のフィッティングの基本的なポイントからお話しします。
・フィッティングの要は靴の後方
足にフィットする靴というのは、靴の後方部分が足の形状に合致している靴です。
つまり、足を上から見たときに、かかと、親指の付け根、小指の付け根、この3点を結んだ三角形が合致する靴を選ぶこと。
これがフィッティングの基本になります。
つまり、かかとが収まるべき所にかかとが収まる。親指と小指の付け根が収まるべき所にしっかりと収まるということが大切なわけです。
具体的に言うと、かかとの後ろに指が入るほど隙間があいてしまうケースでは、サイズが大き過ぎるか、かかとの大きさが靴と合っていないということになります。足と靴がしっかり固定されないことにより靴擦れを起こしやすくなります。
逆に、ボールジョイント(親指や小指の付け根の関節)が前方に押され飛び出ているような場合も三角形が合っていません。
ボールジョイントは、ポイントで当たりを感じてしまうようだと痛みが出る場合が多いので、広い面で接する靴を選びましょう。
靴のフィッティングには他にもポイントがありますが、基本としてこの三角形の考え方がベースにあれば、極端に間違ったサイズ選びにはならないです。
・指先は自然に伸びること
靴の前方(ボールジョイントより前方部分)は、まず指先が自然に伸びることが大切です。
つまり、指先に適度な空間があり歩行時に指が前方に詰まらないということです。
ボールジョイント周りには足を固定する為、ある程度の締め付けが必要なのですが、指先が強く圧迫されてしまう靴では指の変形を招いてしまうことになります。
靴のデザインには、ロングノーズ、ショートノーズ、ラウンドトゥ、スクエアトゥなど色々なシルエットがありますが、足の形によって相性の良し悪しがあります。
試着の際は、指先が自然に伸びているか気にしてみてください。
自分の足にぴったり合う靴に出会えないという方
フィッティングの基本を抑えた上で、「そうは言っても、自分の足にぴったり合う靴なんてなかなか無いよ」という人もいると思います。
自分の足に真剣に向き合っている人ほど、足に合った靴の少なさに嘆いてしまうかもしれません。
こちらのブログでも書いた通り、既成靴はマス向けに作られているものなので、ぴったりの靴に出会えないというのは当然のことです。
かと言って、オーダーメイドも気軽にできる金額ではありません。
そこで現実的に必要になってくることは、100点ではないけど80点はつけられる靴を見つける方法。
困っている人にアドバイスするなら、
紐で調整する靴
かかとのホールドが強い靴
この2点を満たしている靴がおすすめです。
足を靴の中で固定しやすいので、多少合っていない部分があってもトラブルが出にくいです。
最後に
今回は、誤解しやすい革靴のタイトフィッティングについてお話ししました。
革靴のサイズ感について世間一般的に言えば、大き過ぎるサイズを履いている人が多いように思います。
「タイトフィッティング」という言葉を知っている人であれば、靴選びは真剣なものとして取り組んでいるはずです。
しかし、「タイトフィッティング」という言葉は時に一人歩きし、極端になるケースも少なくないようです。
靴のフィッティングは流行によって変化するものではありません。
まずは「基本」をしっかり抑えることが大切です。