「お店に行って靴を探す。」
ほとんどの方がご経験のあることだと思います。
もしかしたら、将来は自動採寸技術が進み、靴も自宅にいながら選ぶのが一般的になる時代が来るかもしれませんね。
しかし、自動採寸はまだサービスとして運用するには課題が多いようです。足には数値だけでは捉えられないポイントが多くあります。知識の浅いフィッティングデータを集積しても儲け主義のアルゴリズムにしかなりません。
皆さんの足にとって良い技術革新になる事を願うばかりです。
Gennojiです。
冒頭、自動採寸の話に脱線しましたが、今回はお店で革靴を試着する際の心得についてお話しします。
革靴を買いに行く際、少しの心掛けで靴選びの満足度が上がります。
靴選びは自分の足の状態を確認する絶好のチャンス。
靴を選ぶ時間をより有意義なものにして是非ご自身の靴経験値を上げてください。
靴屋に行く前に準備しておくこと
何事も事前準備が大事ですよね。
靴選びも同じ。とは言え難しいことは何一つないありません。
・革靴に合わせるソックスを履いて行く
ビジネス用途で革靴を探しているのに、カジュアルな厚手ソックスで試着してしまったら、ビジネスソックスで履いた時とフィット感が大きく変わってしまいます。数ミリの差が足にとってはとても大きな違いなのです。
親切な靴屋さんであれば試着用にソックスを貸してくれるかもしれませんが、そうでない場合もありますので、靴屋に行く際は革靴に合わせるソックスを履いて行きましょう。
・手持ちの一番快適な革靴を履いて行く
革靴を買いに行くのに、なぜ革靴を履いて行く必要があるのか?
前回のブログでも書きましたが、足の感覚はとても曖昧なものです。
特に足は直前に履いていた靴の影響を受けやすいです。
締め付けの緩いスニーカーやサンダルを履いていると、革靴に履き替えた時にキツさを感じやすくなります。
革靴を選びに行く際は、事前に革靴に足を慣らした状態で行くことで、より正確なフィッティングの判断が出来ます。
また、一番快適に履ける革靴で行くことも重要です。その靴が現時点であなたの靴選びの基準になるからです。
靴を履き比べることで、「この靴の方が指先が自然に収まる。」「甲周りが少し緩いかな。」などのような具体的なポイントが意識出来るはずです。
・靴選びの時間帯について
よく「靴選びは夕方にするのが良い」という話を耳にしませんか?
この言葉の意味は「夕方は足がむくんで大きくなっている時間帯だから、その状態の足で靴のサイズを選ぶべき」という考えからきているのでしょう。
しかし、これには二つの認識の誤りがあります。
一つは、むくみの出る時間帯は人それぞれ異なるということ。
むくみはリンパや血流の滞りで起きています。デスクワーク中心で、あまり歩かない人だと夕方にかけてむくむことが多いですが、朝が一番むくんでいて日中から徐々にむくみが解消されるという人だっています。
もう一つは、むくみが出ている状態で靴を選ぶこと自体が正しいとは言えないこと。
足がむくんでいる状態でサイズが丁度良いということは、逆に言えば、それ以外の時間帯はサイズが緩いということ。緩いサイズの靴を履いているとかえってむくみを悪化させることがあります。
足にぴったりの靴を履く方が、足裏全体を使って歩行出来るようになる為、血行が促進し、むくみ解消に繋がります。
靴選びの時間帯にそこまで気を使う必要はないですが、むくみが出ていると感じたらサイズ選びはより慎重になるべきでしょう。
初めて訪れるお店では採寸からしてもらう
靴の試着を申し出る際、「この靴の26センチを履かせてください。」なんて言ってないですか?
「靴は◯◯センチが自分のサイズ」と決めつけている人けっこう多いです。
しかし、実際のところ靴のサイズ感はメーカーによって大きく違うものです。同じブランドであってもラストが変わればサイズ感は変わってきます。
靴の試着の際は、まず足の採寸をしてもらうことをおすすめします。それによって販売員から的確なアドバイスが貰いやすくなります。
(採寸をしていない靴屋では、フィッティングの有効なアドバイスは貰えないでしょう。靴選びの経験値が高い人以外にはおすすめしません。)
靴の製法によるフィッティングの違いを理解する
新品の革靴のサイズ選びには色々なことが言われます。
「革靴は伸びるから、ちょっとキツめが良いんだよね?」
よく聞かれますが、誤解が生じやすいところなので靴の製法ごとに説明します。
・グッドイヤーウェルト製法は後々ゆとりが出る
高級既成靴で多く見かける「グッドイヤーウェルト製法」の靴は、構造上ソールの内部にコルク等の詰め物が入っています。
その為、グッドイヤーウェルトは履き込んでいくとインソールが足裏の形状に沈み込みゆとりが生まれます。したがって、フィッティングの際もゆとりが出ることを想定してサイズ合わせをする必要があります。
新品の状態で少しかかと周りが緩いかな?と感じるようだと、馴染んだ頃にはもっと緩くなるので注意が必要です。
しかし、とにかくキツく合わせれば良いという話ではありません。
足と靴のボールジョイント(一番幅が広い部分)の位置が合っていること、つま先の捨て寸(指先の空間)が確保されていることは確認しておきましょう。
部分的に強く当たりを感じるようであれば、その靴と足の相性が悪いと考えられるので、我慢しようと思わず他の靴を検討した方が良いです。
足に合っている靴であれば、新品時の圧迫感はあるにせよ広い面で足に触れているので痛みになりにくいです。
・マッケイ製法、セメンテッド製法はそこまでサイズが変わらない
「マッケイ製法」や「セメンテッド製法」の靴は、内部に沈み込む余地があまりない為、グッドイヤーの靴ほどのサイズ変化はありません。
アッパーが足の形に沿って変形することで多少のゆとりは出ますが、馴染んで柔らかくなったと感じる程度です。
初回のフィッティングから快適に履けるサイズ感で選んで良いでしょう。
購入を決める前に10分靴に足を入れてみる
前述した通り、足の感覚は曖昧な部分が多いので短時間では感じ取れないこともあります。
購入候補の靴が決まったら、最低10分は足を入れて足の感覚に神経を集中しましょう。踵が浮かないか?当たりの強い部分はないか?くるぶしは当たっていないか?
もちろん、購入前の靴ですから思いっきり曲げて履きじわを付けてしまうと店員さんも嫌な顔をするでしょう。お互いに気持ち良い時間を過ごす為にも靴にダメージを与えない配慮はしつつ、店内を少し歩かせてもらいましょう。
最後に
今回はお店で革靴を試着する際の心得についてまとめてみました。
靴選びは自分の足の確認作業です。
年齢を重ねていくと足の形は次第に変化するもので、体重の増減やライフスタイルの変化、体調の変化など様々な影響が足に出ます。
靴を選ぶ時ほど自分の足に向き合う機会もないですから、靴を選ぶ時間は大切にしていただきたいと思います。
皆さまに良い靴との出会いがありますように!