日本には昔から「足元を見る」という言葉があります。
「相手の弱みにつけ込むこと」という意味で、江戸時代、街道や宿場などにいた駕籠かきや馬方が旅人の足の疲れ具合を見抜いて、要求する値段を変えたことが由来だそうです。
しかし、靴屋においてはその行為に違う意味があるんです。
Gennojiです。
今回は、靴屋がお客さんの履いてきた靴を見るワケについてお話しします。
かく言う私も、店頭で靴の接客をする際はやはりお客さんの履いている靴を見ます。
もちろん、ジロジロ見るのは失礼な行為ですから、靴を脱いでいただく時にそれとなく確認します。
おそらくは、靴のフィッティングを仕事にしている人なら、同じようにお客さんの靴を見ているのではないでしょうか。
それはなぜでしょうか?
どのような靴の履き方をしているのかを確認する為
私の場合、ほぼこの理由に尽きます。
つまり、履いている靴の状態を見て、その方が普段どのような靴選びをして、どのような靴の履き方をしているのかを確認しています。
それによって、その方の抱えている靴の悩みに対してより適切なアドバイスが出来るようになります。
・履き込まれた靴には多くの情報が詰まっている
ある程度履き込まれた靴というのは、持ち主の靴に対する認識が如実に現れるものです。
例えば、連日同じ靴を履いているという人であれば、購入から間もない靴であってもくたびれた印象の靴になります。
靴が吸収した汗が抜けきらないことで、革が変形し易くなり、ソールが反り返ったり履きじわが深く入り型崩れの原因になります。
おそらく修理時期も早くやってくるでしょう。
そういった方が、靴を長持ちさせたいとお考えであれば、靴の買い替えよりも靴を買い足しローテーションを作ることをおすすめします。
逆に、履き方の上手い人の靴は年季が入っていても非常に綺麗な印象を受けます。
履き方が上手いというのは、複数の靴を順番に履き回すことで靴をしっかり休ませており、天候によっても靴を使い分け、適切なタイミングで修理をするような使い方です。
もちろん、適切なお手入れが出来ることも重要でしょう。
これから革靴のお手入れを始めたいと思っている人に知って欲しいこと
・どのようなサイズ感で靴を履いているかも重要
多くの方は、靴を購入する時に自分でサイズを選んでいるのではないでしょうか。
もちろん、フィッティングのポイントを理解していて、ご自分で適切なサイズを選べる人もいるでしょう。
しかし、普段様々な年代の方と接していると、革靴慣れしていない20代前半の方と60代以上の方には高い割合で大き過ぎるサイズを履いているのを見受けます。
20代の方だと、スニーカーと同じサイズで革靴を買っているという理由が多いようです。
60代以上の方だと、「とにかく幅広の靴」がサイズ選びの基準になっている為、サイズが大きくなってしまうようです。
普段から大き過ぎるサイズの靴に慣れてしまっている方やヒモを解かず脱ぎ履きをする方の場合、私たちもフィッティングの時により慎重なコミュニケーションが必要になりますので、予めどのようなサイズ感で履いている人なのか見ておく必要があるのです。
・革靴を買いに行く際は、革靴を履いていくと良い
前回こちらのブログでも書きましたが、革靴を買いに行く際は、革靴を履いていくことをおすすめします。
これには二つ理由があって、一つはあらかじめ足を革靴に慣らしておくことでサイズ選びを間違えない為ですが、もう一つは上でも述べたような理由から販売員側も多くの情報を得られるので、一人一人に沿ったアドバイスがしやすくなるからです。
最後に
今回は、靴屋がお客さんの履いてきた靴を見るワケについてまとめてみました。
実際のところ、文字通り「足元を見て」対応を変えるような販売員もいるのかもしれません(商売である以上、どんな業界でもお得意さまが優遇されます)。
しかし、それとは関係なくお客さんの靴から様々な情報を読み取る観察力を持っている販売員ほど、プロとしての的確なアドバイスをくれるはずです。
靴を選ぶ際は、商品に関係なくとも普段の靴のお悩みを相談してみるのも良いと思います。
そういったコミュニケーションが深まることが、あなたにとってのより良い選択に繋がるからです。